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2008.08.20 Wednesday

「日雇い派遣禁止」は新たな「コンプライアンス不況」になってしまうのか

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    昨日のお題に続き、コンプライアンス不況(法令順守によって引き起こされる不況)になりそうな「日雇い派遣禁止」の流れについて、興味深い記事があった(森永卓郎氏)ので大部分を引用してみる。


    #############################
    (前略)
    1986年当時の派遣労働の状況は現在とはまったく違っていたのである。

     当時は、口入れ屋というものが幅を利かせていて、労働者を集めて大量に現場に送り込み、高率のピンハネをするということが常態化していた。しかも、そこに暴力団がからんでいることが多かったのだ。そうした実例があったので、派遣労働というものは搾取の温床になるということで、労働基準法で禁止されていたのである。

     だが、時代は変わりつつあった。わたしがいたときの議論は次のようなものであった。「世の中は変化してきたので、搾取される心配のない職種、例えば、通訳やシステム開発など、高い技術を持った人については派遣を認めてもいいのではないか」 ―― 。国際会議があったときには通訳が必要になるが、企業が通訳を正社員として雇用しておくのは大変なコストがかかってしまう。そこで、そうした高い技術を持ち、いわば腕一本で生きていける人に限定して派遣を認めましょうというのが、労働者派遣法のおおもとの考え方だった。

     そうした理念のもと、専門性が高い13業務に限定して派遣労働を解禁したわけである。業務の数は直後に16業務となった。

     問題は、その業務の数がずるずると拡大されたことである。

     1996年には26業務に拡大、1999年にはさらに大きな転換があった。それまでのポジティブリスト(認められる業務を列挙する方式)から、ネガティブリスト(禁止する業務を列挙する方式)に変わったのである。

     その結果、港湾運送、建設、警備、医療、製造を除いて、原則どの業務でも派遣労働が自由になった。ここで禁止された五つの業務は、一般の人ができる業務である。これを解禁しては搾取の温床になるということで禁止したわけだ。百歩譲って、許されるのはここまでであったといえよう。

     2004年、小泉内閣の下で、とうとう製造業務への派遣労働が解禁されたのだ。現在のような格差拡大が生じた最大の原因は、この製造分野への派遣労働の解禁だった。その結果、ものすごいピンハネが常態化したのである。

     製造ラインで働く派遣労働者は、多くの場合、正社員と同じ仕事をしながら、半分以下の時給しか受け取っていない。格差拡大を問題にするならば、製造業務への労働派遣を禁止すべきである。

     舛添要一大臣は秋葉原の事件を受けて日雇い派遣の禁止を言い出したが、実は、加藤容疑者は日雇い派遣ではなかった。数カ月間の期間契約で、製造業へ派遣されていたのである。まさに、小泉内閣で拡大された業務だったのである。

     加藤容疑者の時給は1300円であったという。年間2000時間働いても年収は260万にしかならない。それに対して、彼が働いていた関東自動車工業の正社員の平均年収は740万円である。おそらく、仕事の内容はほとんど変わらないであろう。それでいて、この賃金格差はなんなのだろうか。

     先日のグッドウィル廃業に伴って正社員になれた若者たちに話を聞くと、「こんなに給料をもらっていたんだ」と、まず驚いたという。裏を返せば、「こんなにピンハネされていたんだ」というわけだ。それだけではない。正社員には当然防災用のヘルメットがあるのだが、派遣社員には支給されないのだという。社員食堂に行くと、正社員は3割引なのだが、派遣社員は定価。派遣会社の多額のピンハネに加えて、勤務先の会社でもこうした格差が横行しているのである。

     わたしは、賃金格差があること自体を批判しているのではない。有能な人がたくさんもらうということは当然あってよい。だが、同じ仕事をしている人の給料や待遇が、大きく違うというのはいけないと思う。それでは、「身分が違うから、お前は安く働け」と言っているようなものではないか。

     わたしは、そういうことが嫌いだ。同じ工場で同じ仕事をしているならば、給料も待遇も同じにすべきではないか。もちろん、派遣会社に多少の手数料は必要だろうが、基本のラインとしてそれを守ってほしいのである。

     繰り返すが、本当に政府が格差をなくそうと考えているのであれば、まずは行き過ぎた規制緩和だった製造業務への派遣労働を禁止すべきなのである。ところが、今回の報告書ではそれに触れられていない。どうもわたしにはそれが解せないのである。考えてみれば、昨今の労働問題といえば、常に労働側が譲歩を迫られ、経営側の思うように進んでいくという実情である。

     証拠はないものの、製造業務への派遣労働禁止をしないのは、派遣労働を大量に利用している大手製造業と、大きな利益を得ている大手派遣会社に、政府が配慮しているからではないか。一方で、今回の規制対象になった日雇い派遣をしている派遣業者は、ほとんどが中小業者か新参者である。

     そう考えると、今回の日雇い派遣禁止という話も、結局は大手業者の利権を守りつつ、世間の批判をかわすために出てきた措置ではないかと思えて仕方がないのである。
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    もっと幅広く事実関係を確かめてみないと正確なところはわからないが、少なくともテレビや新聞だけでは得られない重要な論点が見られる。

    その一つが、そもそも江戸時代から続く口入屋的な人材派遣から現代の派遣労働という業態がどのように発展してきたのか、そしてどのような規制があって規制緩和され、また規制強化に向かおうとしているのかの一連の流れが書いてあるのが興味深い。

    ただし、小泉改革で起こった規制緩和によって格差が広がったかというと、そうではないだろう。派遣労働者になることで時間の融通を作りたいと思っている人は自らそのマイナス面も受け入れているのだろうし、派遣労働者のっみちを選ばざるを得なかった人は、幼い頃からの努力がどこか足りなかったのではないか。小学生の時代から受験勉強と習い事を両立させ、人一倍努力してきた人々が正社員としてそれなりの雇用を獲得している例もあるだろうし、社会人になってこの状態ではまずいと一念発起して資格取得やIT技術を身につけ、正社員になったりフリーで仕事を請けて稼ぐ人々もたくさん居る。ようは本当に死ぬ気で努力して、努力してそれでも派遣労働者になるしかなく、不当に安い賃金で働かされているのかということを問いたい。

    時給1300円だろうが、その身分を自分で選んでしまった人はそれなりの待遇しか受けられないのは当然である。同じような仕事をしていても、資格がある経験がある、将来の見込みがあると認められた人はそれなりの待遇を受けられるというものだ。

    そうすると、一番の問題は教育となるだろう。読み書きそろばん、IT、英会話だけ教えるのではなく、日本人は成人すると勤労と納税の義務があり、日本の社会はどのような構造になっていて、有利に生活をするにはどのような努力を重ねなければならないのかを、親も学校も地域社会も小さいときから教えてやるべきだ。

    それをおろそかにしているから、深夜番組にある「給与明細」といった番組で、ホストやお水やAVを仕事すると簡単に高額のお金が稼げるという情報だけ入ってしまい、世の中の厳しさを教わらないまま成人してしまう若者が増えているのではないか。

    ITも英会話もいいから、まずは日本国憲法の精神と世界を取り巻く弱肉強食の資本主義社会の現実を義務教育に盛り込んで欲しいものである。
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